Interview 社員インタビュー アーカイブ

  • 2003年入社

    経営・財務・人材コンサルティング事業部

    中郡 雅人

    コンサルタントとして大切にしていること
    分析することです。
    「分ける」ことによって「分かる」ことがたくさんあります。分析とは「複雑な事柄をひとつひとつの要素に分け、明らかにすること」。コンサルティングの現場も、情報やデータを「分ける」ことで真の課題や答えが見つけやすくなります。中小企業の経営者は決算書の数値を元に振り返りはしていますが、部門別や支店別、商品別などの詳細な部門別会計を導入しているケースは稀です。そのため、正確な業績評価や正確な経営判断ができないことがあります。まずは「分けて」情報を整理し、どこに問題があるのかを明らかにすること。経営再建に向けた重要なアプローチです。
    分析をすることが成果に繋がった事例
    分析することが本質的な課題を見極めることに繋がったことがあります。
    神奈川県の自動車整備業の企業に関わったときのことです。その企業は60代後半の社長と、そのご子息で自動車メーカー勤務を経て入社した専務が経営されている企業でした。同社は人口減少や若者のクルマ離れの影響で、ここ数年赤字が続いていていました。社長は業績回復に向けた強い決意をされており、また、私が共同執筆した書籍「“クルマ屋”経営塾2」のファンだったこともあり、色々とアドバイスが欲しいとご契約いただきました。

    まず現状を把握したいと思い、社長と専務にヒアリングしたのですが、会社全体の数字を大雑把に把握されているだけで、販売部門、修理部門、ロードサービス部門など、部門ごとの収支までは掴めていませんでした。そこで私が取り組んだのが部門別会計です。
    まず、売上・原価(材料費、外注費等)を各明細表、財務資料を元に部門別に分けます。その後、販管費(人件費、地代家賃、広告宣伝費、旅費交通費 等々)も部門別に振り分けていくのですが、各費用項目を直接費と間接費に分ける必要があるため時間がかかります。部門別に費用を振り分けていく際、例えば1名の従業員が2つの部門を兼任している場合、労働時間を何時間ずつ各部門に費やしているかを集計し、人件費をそれぞれの部門ごとに振り分けていきます。売上、原価、販管費の全ての振り分けが完了後、部門別に分けて課題と原因を抽出していき、その改善策を3カ年計画書に落とし込みました。
    しかし、ここからが大変です。計画を立ててもその通りにいかないことが山のように発生します。例えば景気の浮き沈みなど、コントロールのきかない外的要因。内的要因であれば機械の故障や、従業員の突然の退職などもあるわけです。予期せぬことが起こるのが当たり前だという前提で、すぐに修正できるようにしなければいけません。そのため、私は社長がどんなに忙しくても定期的に面談する機会を設けていただき、計画と実績の差異を把握、原因追究と改善策を一緒に考えていきました。そうすることで、社長はすぐに改善策を実施し、差異を最小限に抑えることができました。

    当初は3年かけて黒字化する計画でしたが、1年で赤字はおよそ半分となり、翌年には黒字となりました。専務だったご子息は社長に就任し、新しいレンタカー事業に意欲を燃やすほどに改善することができました。

    この企業に対しては部門別会計、予実管理、幹部研修なども実施しましたが、基本的に面談時は、当時の社長と専務の意見を整理し、まとめることに注力しました。社長は創業者で会社に対する熱い想いがあり、専務も会社を継ぐ覚悟を決めて色々と勉強されていたのですが、親子であるがゆえに意見が対立したり、本音で話す機会が少なくなったりしていました。そこで私が第三者として面談に加わることで、「会社を良くしていきたい」というお二人の想いが同じ方向に向くように整理していきました。コーチング、ファシリテーションといったコミュニケーションスキルの活用も重要でした。そういった中で3人の信頼関係が構築され、一体感が強まり、良いときも悪いときも同じ感情を共有できました。

    このように、事業を再生するためには部門レベルで財務状態を把握し、「課題と原因がどこにあるか」を分析し、PDCAを継続的に回していくことが必要になるのです。

    ※直接費と間接費とは…直接費は生産に直接関係している費用、間接費は生産に直接関係しない費用のこと。

    ※PDCAとは・・・Plan(計画)、Do(行動)、Check(評価)、Action(改善)を繰り返すことによって、業務を継続的に改善する手法。
    中小企業向けにコンサルティングする際に気を付けていること
    「社長に教える」という意識ではなく、「社長と共に歩む」という意識を持ち続けることです。
    千葉県で水産加工業を営んでおり、従業員15名、売上15億円のK商店。先代社長からご子息に事業承継して間もないときにご契約をいただきました。しかし先代社長は事業承継の前に工場への大きな設備投資をしており、借入金が長期と短期合わせて18億円。身の丈に合った借入額ではありませんでした。そのため、私がまず取り組んだのがフリーキャッシュフローと返済額の適正なバランスを取ること。
    簡易キャッシュフロー計算書を作成し、現状の返済余力を把握。もともと商品力があり、取引先も安定している企業だったため、今後の目標となる5カ年計画を作成しました。3つの金融機関から合計で7本の借り入れを起こしていたものを、利息や返済額、担保の条件を整理し、社長と一緒に各金融機関に借り入れ条件の交渉に行きました。地道な交渉を継続しながら、設備投資を控え、売上に貢献しない加工機械の見極めと売却を進めた結果、財務体質は健全な状態に回復。最終的に借入は18億円から7億円にまで減少しました。
    キャッシュフローを圧迫する毎月の返済額もぐっと小さくなり、生み出すキャッシュの中で返済できるようになりました。そうなると銀行からの評価も上がり、さらに好条件の融資の提案をいただけるようになるなど、グッドスパイラルに入っていきました。

    中小企業には、強みはありますが多くはありません。どこに経営資源を集中させるかの判断が重要です。そのためには、財務状況を常に正確に把握し、中長期の目標を立て、達成に向けた具体的なアクションを整理し、共に歩んでいくことが大切です。

    また、この会社のように事業承継のタイミングを迎えている会社は非常に多く、今後も増加傾向にありますが、一般的に事業承継対策と言えば、贈与や相続に対する節税対策をイメージされる方が多いようです。確かにこれらも重要なのですが、「事業承継」=「事業」の「承継」のため、その会社の創業のきっかけや経営理念、ビジョン、強みとなる技術やノウハウなど会社の本質的な部分を把握、整理し、後継者に伝えていくことが必要であると私は考えています。
    やりがい
    コンサルティングには、セオリーはあっても正解はありません。だからこそ、やりがいがあります。
    東京都内にある従業員35名で、印刷業を営む企業にお伺いしたときのことです。IT技術の進化に伴い紙媒体が減少するのに比例して、印刷そのものの需要が減り、5年前3.3億円の営業利益だったのが、1.3億円の営業損失を出すほどまでに悪化。財務体質を改善したいとご契約いただいた案件。

    同社はPUR製本と言う、一般的な製本糊よりも開きの良い本が作れ、なおかつ丈夫で長持ちする本が作れる特殊技術を持っていました。PUR製本専用の機械が必要なため、当時の国内では取り扱える会社は多くなかったのです。確かな武器があるにもかかわらず、契約時は赤字により新規で融資を受けられない、勝負したくてもできない状態でした。さらにリスケジュール期間中は金融機関からの新規調達は難しいため、社長も不安が大きく、ネガティブな発言も多かったのです。
    この状況を打開するために数年間、社長と一緒にリスケジュールの計画書を作成し、同時並行でこの特殊技術がいかに画期的な技術であるか、キャッシュを生む技術なのかを説明するための資料も作成。それらの資料を片手に銀行と交渉に交渉を重ね、ついに新規で銀行から5億円の融資が決まる日がやってきます。このとき社長と強く握手したときの感動は今でも忘れません。この融資をきっかけにリスケジュールの解消と、財務体質の改善が進んだことにより、社長が会社の未来に対して前向きになったことが、自分のことのように嬉しかったです。
    現在は新規での資金調達も可能となっているので、社長にはさらに強みであるPUR製本部門の売上を伸ばしていただきたいし、ペーパーレス化が進んでいるので新たな商品開発などにも力を入れてほしいとも考えています。
    ※リスケジュールとは・・・金融機関への返済が苦しくなってきたときに、返済可能な計画に変更すること。
    コンサルタントとしての想い
    「社会的に不利益を受けている企業を救いたい」。それが私の仕事に対する想いです。資金繰りで困っている中小企業はどうしても「やらなければいけないこと」に追われ、余裕を失い、創業当時に描いていた夢を持てなくなってしまいます。

    そのような中小企業に対してエフアンドエムが提供できる強みはコンサルティングのプロセスを「分業」していることです。現状を分析し、課題を抽出するチーム、継続的にフォローするチーム、専門家チームにコールセンター。これらを駆使し、外部の人間だからこそ持てる客観的な視点をもって経営者を支えていきます。経営者の選択肢を広げ、経営判断の精度を上げることがエフアンドエムのミッションです。

    コンサルティングの結果、社長が未来や目標について、いきいきと語ってくれるようになった瞬間を見ると、自身の仕事の価値を感じます。業種業界の線引きなく、様々な経営者にお会いしてきましたが、その1社1社に思い入れがあります。
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